有機は島ぞうり、無機は赤瓦

塗料の話をしていると、「有機塗料と無機塗料って、何が違うんですか?」と聞かれることがあります。

たしかに、言葉だけ聞くと難しそうです。
有機、無機と言われても、普段の暮らしの中ではあまり使わない言葉ですよね。

そんなとき、私たちはこう考えるとわかりやすいと思っています。

有機は島ぞうり(ビーチサンダル)、無機は赤瓦。

今日はこのたとえで、塗料の違いをできるだけわかりやすくご紹介します。

まずは「有機」と「無機」をざっくり言うと

塗料は、乾くと表面に膜をつくります。
この膜のことを塗膜(とまく)といい、雨や紫外線、汚れから建物を守る大切な役割があります。

その塗膜をつくる中心になる材料の性質の違いを、大きく分けて表したものが「有機」と「無機」です。

有機は、樹脂を主役にしたタイプ。
ここでいう樹脂とは、塗料が乾いたあとに膜になる、いわば塗料の骨組みのような成分です。

無機は、ガラスや石、セラミックのような性質に近い成分を多く取り入れたタイプ。
太陽の光や熱に強い性質があるため、長持ちしやすいといわれます。

……と言っても、これだけではまだピンとこないですよね。

有機は島ぞうり

有機塗料は、島ぞうり、いわゆる沖縄でいうビーチサンダルのようなイメージのものです。

島ぞうりは、やわらかくて、足の動きに合わせてしなるので履きやすいですよね。
少しくらい曲がっても割れにくく、扱いやすいのも特徴です。

有機塗料もそれに近く、柔軟性(じゅうなんせい)があります。
柔軟性とは、かたすぎず、しなやかに動きについていける性質のことです。

建物は、見た目には動いていないようでも、暑さ寒さや湿気、乾燥の影響を受けて、わずかに伸びたり縮んだりしています。
そのため、塗膜にもある程度のしなやかさがあると安心です。

また、有機塗料は下地になじみやすく、密着性(みっちゃくせい)にも優れています。
密着性とは、塗る面にしっかりくっつく力のことです。

ただし、島ぞうりを長い間外に置いていると、だんだん色あせたり、傷んだりしてくることがあります。
有機塗料も同じように、紫外線や熱の影響を受けながら少しずつ劣化していきます。

この劣化(れっか)というのは、時間とともに性能や見た目が落ちていくことです。

無機は赤瓦

一方で無機塗料は、赤瓦のようなイメージです。

沖縄の赤瓦は、強い日差しや雨にさらされても、どっしりした印象がありますよね。
かたくて丈夫で、太陽の光にも強い。そんなイメージです。

無機塗料も、一般的には耐候性(たいこうせい)が高いといわれます。
耐候性とは、雨・風・紫外線・熱といった屋外の厳しい環境にどれだけ強いか、という性能のことです。

特に塗膜を傷めやすいのが紫外線です。
紫外線は太陽の光に含まれる成分で、肌の日焼けだけでなく、塗膜の色あせや傷みにも大きく関わります。

無機成分は、その紫外線の影響を受けにくい性質があるため、長期的に見ると傷みにくい傾向があります。

ただし、赤瓦だけを見てもわかるように、かたいものは丈夫な反面、しなやかさは得意ではありません。
建物に使う塗料は、ただかたければいいわけではなく、塗りやすさや密着性、建物の動きへの追従も大切です。

実は「無機塗料=全部無機」ではありません

ここは、誤解されやすいポイントです。

無機塗料と呼ばれていても、実際には無機成分だけでできているわけではないものが多くあります。
なぜなら、無機成分だけでは、かたすぎたり、塗料として扱いにくかったりするからです。

そこで多くの無機塗料は、無機成分のよさを生かしながら、有機樹脂も組み合わせてつくられています。

つまり、実際の製品は

赤瓦の丈夫さを持ちながら、ビーチサンダルのしなやかさも少し取り入れている

そんなイメージに近いかもしれません。

では、どちらがいいのか(これが本題

ここで気になるのが、「結局、有機と無機はどっちがいいの?」ということだと思います。

答えは、建物や目的によって変わるです。

たとえば、

  • しなやかさや塗りやすさを重視したい
  • 既存の下地との相性を見ながら選びたい
  • コストとのバランスも考えたい

そんな場合は、有機系の特徴が生きることがあります。

一方で、

  • 紫外線に強い塗膜を求めたい
  • 長く美観を保ちたい
  • 耐候性を重視したい

そんな場合は、無機系の特徴が魅力になります。

もちろん、実際の塗替えでは、塗料の種類だけでなく、下地の状態もとても重要です。
下地とは、塗料を塗る相手側の面のことで、外壁や屋上、防水面、金属面などを指します。

同じ塗料でも、下地との相性や、施工する環境によって結果は変わります。
そのため、名前だけで判断するのではなく、どこに、何のために塗るのかを見ながら選ぶことが大切です。

難しい言葉も、たとえれば少し近くなる

有機と無機。
言葉だけ聞くと、少し遠い話に感じるかもしれません。

でも、

有機は島ぞうり(ビーチサンダル)
無機は赤瓦

と考えると、性格の違いがぐっとわかりやすくなります。

やわらかく、しなやかで、扱いやすい有機。
かたくて丈夫で、太陽の光にも強い無機。

どちらが上、どちらが下というよりも、それぞれに向いている場面があるということです。

塗料選びは、カタログの言葉だけではなかなかわかりにくいものです。
「うちにはどちらが合うの?」
「この違いをもう少し具体的に知りたい」
そんなときは、ぜひ気軽にご相談ください。

建物の状態や、困りごと、ご予算に合わせて、一緒に考えていけたらと思います。