「国場川に白い筋が流れている」一本の電話からクワラスは始まった

平成9年、1997年に仲里ペイントは現在の豊見城市へ移転してきました。

当時は、まだ近隣に建物が少なく、国道329号バイパスも開発工事の途中。

会社からは、国場川の様子がよく見えました。

今とは少し違う、開けた景色が広がっていた頃です。

そんなある日、一般の方から一本の電話がありました。

「国場川に、白い筋が帯のように流れている」

そして、

「お宅の会社から流れたものではないか?」

と言われたのです。

まさか、うちから?

びっくりしました。

仲里ペイントは塗料を扱う会社です。

川に流れている白いもの。

そう聞けば、

「塗料ではないか」

「塗料会社から流れたのではないか」

と思われても不思議ではありません。

すぐに、会社の設備や作業状況を確認しました。

当時、確認できた範囲では、仲里ペイントの排水が原因だとは確認されませんでした。

しかし、国場川に流れていた白い筋が何だったのか。

どこから流れてきたものだったのか。

詳しい原因の特定まではできませんでした。

「うちが原因ではなかったようだ」

それだけで終わることもできたと思います。

でも、その電話が心に残りました。

原因ではない。それで終わっていいのか

電話をかけてきた方は、国場川に流れる白い筋を見過ごしませんでした。

川の変化に気づき、

「どこから流れてきたのだろう」

と考え、わざわざ会社へ連絡してくださったのです。

最初はクレームのように感じた電話でした。

でも、今振り返ると、少し違って見えます。

その方は、国場川を気にかけていた。

自分たちが暮らす地域を大切にしていた。

沖縄の川や海を、汚してほしくなかったのだと思います。

地元が好きだから、変化に気づく。
地元が好きだから、黙って見過ごさない。

その思いは、私たちも同じです。

仲里ペイントも沖縄で仕事をし、沖縄の人たちに支えていただいてきた会社です。

塗料を売る私たちだからこそ、使ったあとの水について、もっと考えなければいけない。

その電話をきっかけに、自分たちの排水や、塗装現場から出る洗浄水を意識するようになりました。

「水性だから、水に流していい?」

現在、建築現場では多くの水性塗料が使われています。

「水性」と書かれていると、環境にやさしく、そのまま水に流しても問題がないように感じるかもしれません。

しかし、水性塗料の「水性」とは、塗料を塗りやすい状態にするために、水を使っているという意味です。

水性塗料には、色を付ける顔料や、乾いたあとに塗膜をつくる樹脂など、さまざまな成分が含まれています。

顔料とは、塗料に色を付ける細かな粉のこと。

樹脂とは、塗料が乾いたあとに、建物を保護する膜の中心になる成分です。

水で洗えることと、その洗った水をそのまま流してよいことは、まったく別の話です。

刷毛やローラーを洗った水にも、塗料の成分は残っています。

沖縄では、その先に川や海がある

現場の近くにある側溝や排水口。

そこへ流した水が、最終的にどこへ行くのか。

見ただけでは分からないことがあります。

すべての排水が、同じ場所へ流れるわけではありません。

下水処理施設へつながるものもあれば、雨水を流す経路を通って、川や海へつながるものもあります。

「少しくらいなら大丈夫」

「水性だから問題ない」

と、現場だけで判断することはできません。

海に囲まれた沖縄だからこそ、使った水の行き先まで考える必要があります。

どうにかしたい

水性塗料は、これからも必要です。

刷毛やローラーを水で洗う作業もなくなりません。

では、洗った水を処理しやすくする方法はないか。

現場で無理なく使える方法はないか。

特別な設備がなくても取り組める方法はないか。

あの日の電話から生まれた、

「どうにかしたい」

という思い。

その思いが、やがてクワラスの開発へとつながりました。

水性塗料の洗浄水を処理しやすくするクワラス

クワラスは、水性塗料の残液や、刷毛・ローラーを洗った水を、固形物と液体に分けやすくする材料です。

主成分は「ゼオライト」という無機質の鉱物です。

クワラスを洗浄水へ加えて混ぜると、水の中に散らばっている細かな塗料の粒子が集まり、大きなかたまりになります。

この働きを「凝集」といいます。

凝集によってできたかたまりは「フロック」と呼ばれます。

細かな塗料成分をフロックとして集めることで、固形物と液体に分け、処理しやすい状態にします。

ただし、クワラスを使って水が透明に見えるようになっても、無条件で排水口へ流せるという意味ではありません。

分離後の固形物と液体は、現場の条件や自治体のルール、廃棄物処理業者の指示などに従って、適切に処理する必要があります。

クワラスは、

何でも流せる水に変える商品ではなく、適切な処理をしやすくする商品です。

施主さんは、職人さんの手元を見ています

ある職人さんから、こんな話も聞きました。

塗り替え現場で、使った刷毛やローラーを洗おうとしたとき、施主さんがその様子を見ていた。

何かを言われたわけではありません。

でも、その視線に気づいた瞬間、

「この洗った水を、どう処理するのか見られている」

とはっとしたそうです。

お客様が見ているのは、完成した壁だけではありません。

職人さんが現場で何を使い、どのように片づけているか。

その手元まで見ています。

きれいに塗るだけが、きれいな仕事ではありません。

使ったあとのことまで考える。

そこまでが、塗装の仕事だと思います。

公共工事の創意工夫にも

公共工事では、仕様書に書かれた作業だけでなく、現場が自主的に取り組んだ環境配慮や安全対策などが「創意工夫」として評価される場合があります。

水性塗料の洗浄水を適切に処理する取り組みも、現場の環境配慮として記録し、発注者へ説明できる可能性があります。

ただし、クワラスを使えば、必ず点数が付くというものではありません。

評価される内容や提出方法は、工事や発注機関によって異なります。

使用前後の写真を残す。

処理方法を記録する。

導入した目的を説明する。

こうした取り組みを施工計画や工事記録として残すことが重要です。

あの電話を、クレームだけで終わらせない

国場川に流れていた白い筋。

その原因が何だったのかは、今も分かりません。

仲里ペイントからの排水が原因だったと確認された事実もありません。

だからこそ、分からないことを、分かったようには書けません。

でも、はっきりしていることがあります。

あの一本の電話が、私たちに排水を見つめ直すきっかけを与えてくれたこと。

そして、

「自分たちにできることはないか」

と考え始めたことです。

沖縄の川や海を守るのは、大きな活動だけではありません。

現場で出た色水をそのまま流さない。

使った刷毛やローラーの洗浄水を集める。

処理しやすい状態にして、決められた方法で処分する。

一つひとつは、小さな行動です。

でも、その小さな行動を当たり前にする会社が増えれば、沖縄の現場は変わります。

塗料を売るだけで終わらない。
使ったあとのことまで考える。

あの日、国場川を見ていた方の思いと、私たちの思いは同じです。

地元が好きだから、気づいたことを見過ごさない。

クワラスは、一本の電話から始まった、仲里ペイントの答えです。